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「新型コロナの学生生活への影響調査」の結果を踏まえ,文部科学省に対して要請を行いました

 こんにちは,みやぎ奨学金問題ネットワークです。


 9月より実施した「新型コロナの学生生活への影響調査アンケート」にご協力いただきましてありがとうございました。おかげ様で,100件を超える回答を頂きました。

 アンケートの自由記載欄には「自宅から通っているが、交通費や学費、通信費等を奨学金を借りて賄っている為コロナ禍でアルバイトが出来なくなった時期の金銭的な負担がまだ続いている。 バイトが出来なかった約3ヶ月間がとても大きく今の生活を圧迫している。」「授業料を奨学金を借りながら足りない分を自費で負担している。キャンパスに通っていないにも関わらず、設備費も授業料に含まれていることに納得がいかない。」「今後就職する上ではたしてこのような状況下で内定をもらえるか不安でなりません。」「人と会うことが減ったため、ストレスがたまりやすい」など学生の皆様の切実な声が多数寄せられました。

 私たちは,アンケート結果を踏まえ,学生の皆様の願いを実現するため,この度以下の通り,文部科学省に対して要請を行いました。

 今後も当ネットワークは当事者の皆様の声を聴き,必要な要請を行っていきますので,よろしくお願いいたします。







 令和2年12月23日

文部科学大臣 萩生田 光一 殿


みやぎ奨学金問題ネットワーク

              共同代表  菊地  修(弁護士)

              共同代表  江草 重男(宮城県教職員)


新型コロナウイルス感染症に伴う影響で生活が困窮している学生等に対して更なる支援を求める要請書


 師走の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

 当ネットワークは、奨学金問題に取り組む宮城県内の個人・団体で組織する任意団体です。奨学金債務の返済に困っている方の相談をお受けしているほか、奨学金制度の改善、高等教育の学費軽減に向けた運動にも取り組んでおります。

 さて今年6月、貴殿に対し「新型コロナウイルス感染症に伴う影響で生活が困窮している学生等に対する支援を求める要請書」を提出し、新型コロナウイルス感染症の影響で生活が困窮している学生及び奨学金の返済をしている貸与者に対する支援を要請いたしました。

 国が、大学等における修学の支援に関する法律を新型コロナウイルス感染症の影響で家計が急変した家庭に対しても適用することの周知、学生支援緊急給付金の支給を2度にわたって行ったことは、学生の立場に立った対応だと評価をしております。

 このような国の施策が学生の生活を改善することにつながったのか、また、コロナウイルス感染症が学生生活にどのような影響を与えているのか、学生生活の現状を明らかにするため、当ネットワークは、令和2年9月から11月にかけて、主に宮城県内の学生を対象としてアンケート調査を実施いたしました。

 このアンケートにより、「現在の学生生活に不安を感じている。」「学費を減免してほしい。」「人に会わなかったりオンラインの活動や作業が多い中で絶望的な社会情勢を見ていると精神的にとても辛くなる。」などといった学生の悩みや生の声を聴き取ることができました。

 新型コロナウイルス感染症による生活苦は現在に至っても解決しておらず、今後の感染拡大による営業自粛等の影響で更に悪化する可能性もあります。実際、8月に立命館大学で行われた学生アンケートでは、退学を視野に入れている学生が約1割、休学を視野に入れている学生が約25%いるという事実が明らかになっています。

当ネットワークは、学生の声を国の施策に反映させるべく、また、学生が新型コロナウイルス感染症の影響で就学をあきらめる事の無いよう貴殿に対し、下記の点を要請いたしますので、ご検討くださるようお願いいたします。


第1 要請の概要

  当ネットワークは、新型コロナウイルスの影響で世帯収入が減少したことによって、若者が教育を受ける権利を奪われることの無いよう、以下のとおり要請いたします。

 1 新型コロナウイルスの影響によって世帯収入が減少した学生に対し、大学等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うために幅広い財政支出を行うこと。具体的には、「大学等における修学の支援に関する法律」における所得基準に該当しない低所得者層、中間層に対しても個別具体的な事情を考慮して、広く大学等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うこと。

2 学生支援緊急給付金の再支給を決定すること。その際は、学生支援緊急給付金の支給規模を拡大し、前回支給を受けることのできなかった学生にも幅広く支給すること。


第2 要請の詳細

1 国に対する要請の詳細

 (1)要請事項1について

 新型コロナウイルスの影響で、多くの企業や個人事業主が休業、時短営業を余儀なくされました。休業した個人事業主は売上げがなく収入が断たれ、労働者の場合も休業手当は6割程度にとどまる上、休業手当すら支給されず自宅待機を命じられていた方も多数いました。

また、減収は生計維持者のみではなく、アルバイトで学費や生活費を得ていた学生にも生じています。

 東北学院大の神林博史教授(社会学)らによるインターネット調査結果によると、新型コロナが流行し始めた後の今年5月時点の世帯収入が、前年同月より「減った」または「なくなった」と回答した割合は計31.6%に上っています。正規雇用されている人の「減った」または「なくなった」と回答した割合が24.3%だったのに対し、非正規は39.1%、自営業・自由業は44.4%に達しており、特に非正規雇用者や個人事業主への影響が大きいことがわかります。当ネットワークが行ったアンケート調査でも令和2年度の家庭の世帯年収がどうなるかという質問に対して明確に「上がる見込み」と回答した人は108人中3人しかいませんでした。

 このように世帯年収が下がった結果、学生への仕送りや高額な大学等の学費を支払うことが困難な世帯が増えているのが現状です。立命館大学の学生アンケートでは、学部生の2.3%が退学を本格的に考えているとの回答し、「どうするか考えている」回答した学生は7.5%と合計で約1割の学生が退学を視野に入れていることがわかりました。また、休学を視野に考えていると答えた学生は計25.6%にのぼりました。朝日新聞と河合塾が行った共同調査でも全国の国公私立大学のうち少なくとも190大学が経済的理由による退学・休学者が今年度末に増えることが予想されています。

 このように、学生等の生活はひっ迫しており、一日も早い支援が必要です。今年度末に学生が退学・休学に追い込まれることのないよう、また、来年度から進学予定の若者が経済的理由によって進学を断念することのないよう、大学等における修学の支援に関する法律の支援対象となる者については、財源を理由に支給を拒むことなく国の責任において財政支出を行うことを強く求めます。

 また、所得基準を満たさない世帯であっても、支援が必要な場合はあります。例えば、生計維持者が減収しても住宅ローンの支払いを継続しなければならないなど、実質的には住民税非課税世帯・準ずる世帯と同様またはそれ以上に厳しい経済状況に置かれている場合などです。国は形式的な収入額のみで判断するのではなく、世帯毎の個別具体的な事情も考慮して、高等教育等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うよう強く求めます。


(2)要請事項2について

  国は学生支援緊急給付金制度を創設し、住民税非課税世帯の学生等には20万円、それ以外の学生等には10万円支給を2回にわたり支給しました。

  しかしながら、学生支援緊急給付金制度の対象となる学生は全体で約370万人ですが、国は支給を想定している学生を約43万人と設定しました。支給率は約11%にしかならず、給付金の支給が必要な学生に十分行き渡ったとはいえません。また、支援対象者の推薦は各大学が行いますが、大学毎に推薦枠が決められているため、たとえ支給要件をすべて満たしていたとしても推薦枠との兼ね合いで給付金を受給することができない学生が多数生じたものと思われますし、支給要件自体も非常に厳格であることから、同要件を満たさないけれども支給が必要な学生も多数存在するものと思われます(高等教育の就学支援新制度の第Ⅰ区分の受給者以外は、第1種奨学金(無利子奨学金)を限度額まで利用している又は利用を予定している者という要件が課せられていますが、新たな借り入れをおそれ、給付金の受給をあきらめた学生も多数いることが予想されます)。

 当ネットワークが行ったアンケート調査でも実際に学生支援緊急給付金の申請を行ったと回答した人は25.7%で、その内で給付を受けられた人は66.7%でした。また、申請をしなかった人に申請をしなかった理由を尋ねたところ、63.6%が「要件に該当しなかったと」回答しています。このアンケートから明らかなとおり、申請をする際に厳しい支給要件という高いハードルがあり、申請後も7割弱しか受給できないという受給規模のハードルもあることがわかります。すでに学生支援緊急給付金の募集は終了していますが、アンケートでは約8割の学生が再募集を望んでいます。また、学生支援緊急給付金の再募集を行なう際は、「支給金額を上げてもらいたい」「支給規模を拡大してほしい」「支給要件を緩和してほしい」「申請書類を簡素化してほしい」と多くの学生が望んでいます。

  国に対しては学生支援緊急給付金の再支給を求めるとともに支給規模(支給金額の増額、要件の緩和、手続の簡素化)を拡大し、前回支給を受けることのできなかった学生にも幅広く支給することを強く求めます。


2 結語

 このたびは以上を要請しますが、新型コロナウイルスが学生に与えた影響の大きさは依然として測りきれないところがあります。今後も当ネットワークとしては、学生からとの意見交換などで得た情報を基に、今年度の学費の減額あるいは免除といった施策の提案も引き続き行っていく予定です。



【連絡先】事務局長 草苅 翔平(弁護士)

事務局所在地 〒980-0804

     仙台市青葉区大町2-3-11 仙台大町レイトンビル4階

       新里・鈴木法律事務所

        電話 022-263-3191

FAX 022-263-3192

        メールアドレス sy2shosan@gmail.com


みやぎ奨学金問題ネットワークHP

当ネットワークが実施したアンケート結果について


 以 上

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