• みやぎ奨学金問題ネットワーク(宮城)

「新型コロナウイルス感染症に伴う影響で生活が困窮している学生等に対する支援を求める要請書」を提出しました



こんにちは,みやぎ奨学金問題ネットワークです。


新型コロナウイルス感染症による影響で,多くの家庭が減収し,学生自身のアルバイト収入も下がりました。このままでは大学等での学びを継続することができないと退学を検討している学生も多数存在すると報道されています。また,大学等を卒業し,奨学金の返済をしている多くの方も新型コロナウイルス感染症による影響で収入が下がり,返済が困難になっています。

私たちは,奨学金に関する問題を取り扱い,高等教育等の学費負担の軽減を求めていく団体として,この度以下の通り,文部科学省と日本学生支援機構に対して要請を行いました。

今後も当事者の皆様の声を聴き,必要な要請を行っていきますので,よろしくお願いいたします。




(要望書)


令和2年6月2日

文部科学大臣 萩生田 光一 殿

独立行政法人日本学生支援機構 理事長 吉岡 知哉 殿

みやぎ奨学金問題ネットワーク

              共同代表  菊地  修(弁護士)

              共同代表  江草 重男(宮城県教職員)

新型コロナウイルス感染症に伴う影響で生活が困窮している学生等に対する支援を求める要請書

拝啓

初夏の候、貴殿らにおかれましてはいよいよご隆盛のことと存じます。

私たちは、主に宮城県内の奨学金問題に取り組む個人・団体で組織する任意団体です。奨学金債務の返済に困っている方の相談をお受けしているほか、奨学金制度の改善、高等教育の学費軽減に向けた運動にも取り組んでおります。

 さて、今般新型コロナウイルス感染症の影響で多くの家庭が減収し、学生自身のアルバイト収入も下がりました。このままでは大学等での学びを継続することができないと退学を検討している学生も多数存在すると報道されています。また、大学等を卒業し、奨学金の返済をしている多くの方も新型コロナウイルス感染症による影響で収入が下がり、返済が困難になっています。

 そのような状況の中、国におかれましては、大学等における修学の支援に関する法律を新型コロナウイルス感染症の影響で家計が急変した家庭に対しても適用することの周知、学生支援緊急給付金の支給決定をしていただきました。また、日本学生支援機構におかれましても、7月まで返済猶予手続を簡素化するなど適切に対応して頂いていると感じております。

 しかしながら、大学等における修学の支援に関する法律や学生支援緊急給付金の支給規模には限りがあるため、残念ながら現状では、「今般の新型コロナウイルス感染症の影響で大学生等が進学・修学をあきらめることがないよう、しっかりと支えていく」という学生支援緊急給付金の趣旨が十分に実現しているとは言えません。また、奨学金の貸与者の中には猶予期間である120ヵ月という猶予期間を使い切ってしまった者も存在しています。

そこで当ネットワークとしては、貴殿らに対し、下記の点を要請いたしますので、ご検討くださるようお願いいたします。

敬具

第1 要請の概要

   当ネットワークは、新型コロナウイルスの影響で世帯収入が減少したことによって、若者が教育を受ける権利を奪われることの無いよう、以下のとおり要請いたします。

1 国に対する要請

(1)国は、新型コロナウイルスの影響によって世帯収入が減少した学生に対し、高等教育等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うために幅広い財政支出を行うこと。具体的には、「大学等における修学の支援に関する法律」における所得基準に該当しない低所得者層、中間層に対しても個別具体的な事情を考慮して、広く高等教育等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うこと。

(2)国は、学生支援緊急給付金の支給額につき、支給要件を満たす学生等に対しては住民税非課税世帯か否かにかかわらず、15万円を3か月間継続して支給すること。

(3)国は、学生支援緊急給付金の支給規模を拡大すること。

(4)国は、支給対象者の要件(基準)の中から、「第1奨学金の限度額までの利用している者又は利用を予定している者」という要件を削除すること。

2 独立行政法人日本学生支援機構に対する要請

(1)独立行政法人日本学生支援機構は、「大学等における修学の支援に関する法律」における急変事由が生じた後の所得見込額の審査を行うにつき、世帯の生活実態に応じた柔軟な判断を行うこと。

(2)独立行政法人日本学生支援機構は、新型コロナウイルスの影響により奨学金の返済が困難となった貸与者には、災害により減収した場合に準じた期間制限のない返還猶予を広く認めること。

第2 要請の詳細

1 国に対する要請の詳細

 (1)要請事項(1)について

新型コロナウイルスの影響で、多くの企業や個人事業主が休業を余儀なくされました。

休業した個人事業主は売上げがなく収入が断たれ、労働者の場合も、休業手当は6割程度にとどまる上、休業手当すら支給されず自宅待機を命じられていた方も多数いました。

また、減収は生計維持者のみではなく、アルバイトで学費や生活費を得ていた学生にも生じています。当団体も参加した新型コロナウイルスに関する相談会にも、アルバイト先から自宅待機を命じられているが、休業手当を払ってもらえない等と言った相談が寄せられました。

大学生らで組織する団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が行ったアンケート調査では、大学生らの約6割が、アルバイト収入が減ったり、なくなったりしたと回答し、親の収入がなくなった、または減ったと答えた学生も約4割に上っています。また、アンケートに答えた学生の13人に1人が大学を辞める検討を始めているという驚くべき事態になっています。全国大学生活協同組合連合会が令和2年4月20日から4月30日に行った「緊急!大学生・院生向けアンケート」でも将来や進路に不安があるかどうかの質問に対して「とても感じている」、「感じている」と答えた大学生が両者で83.8%を占めました。アルバイトの収入見込みを尋ねる項目では、「大きく減少する」、「減少する」と答えた大学生は7割に達しました(アルバイトをしていないとの回答を除いた割合)。

このように学生等の生活はひっ迫しており、一日も早い支援が必要です。ただ、支援が貸与で行われるのであれば、その分だけ将来の返済負担が増えることになります。将来への不安を抱える学生にとって、貸与での支援は安心して受けられるものにはなりません。安心して学業に取り組む環境を整えるためにも、給付型の支援が不可欠です。

文部科学省は「新型コロナウイルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ」というリーフレットをHP上に掲載し、新型コロナウイルスの影響で家計が急変し、急変後の収入状況が所得要件を満たす場合には、大学等における修学の支援に関する法律の支援対象となることを明らかにしました。家計急変後の所得基準を満たす者については、財源を理由に支給が拒まれることの無いよう、国の責任において財政支出を行うことを強く求めます。

また、生計維持者の家計急変後の収入状況が所得基準を満たさなくとも、支援が必要な場合はあります。例えば、生計維持者が減収しても住宅ローンの支払いを継続しなければならないなど、実質的には住民税非課税世帯・準ずる世帯と同様またはそれ以上に厳しい経済状況に置かれている場合などです。国は形式的な収入額のみで判断するのではなく、世帯毎の個別具体的な事情も考慮して、高等教育等の学費の減免、給付型奨学金の支給を行うよう強く求めます。

(2)要請事項(2)について

   国は学生支援緊急給付金制度を創設し、住民税非課税世帯の学生等には20万円、それ以外の学生等には10万円支給することを決めました。また、文部科学省がこの学生支援緊急給付金の趣旨・必要性として「今般の新型コロナウイルス感染症の影響で大学生等が進学・修学をあきらめることがないよう、しっかりと支えていくことが、何よりも重要です」と明言したことは、新型コロナウイルス感染症の影響で生活が困窮している学生等にとっては勇気づけられる内容であると感じます。

   しかしながら、上記給付額では学生等が安心して進学・修学するには不十分です。全国大学生活協同組合連合会が昨年10月から11月にかけて行った学生生活実態調査結果(全国の国公立及び私立大学の学部学生が対象)によると、2019年の下宿生の1か月の生活費の平均は12万9090円でした。この生活費はあくまでも全国平均ですので、首都圏の大学に通う一人暮らしの学生の住居費は全国平均の5万3930円よりも1、2万円程度多くかかることが予想されます。また、学部や学科によって用意すべき学用品なども異なり、その点での差も無視できません。したがって、給付額としては10万円では足りず、15万円程度の給付を受けなければ学生等が安心して進学・修学することはできないといえます。

また、学生支援緊急給付金は現在のところ1回限りの給付ですが、これでは1か月間しか生活を送ることができません。5月25日に緊急事態宣言が全国で解除されたものの、どの時点で以前のような経済活動が再開され、雇用、収入が回復するのかは全く予測がつきません。仮に経済活動が再開し、学生らが再びアルバイトに従事することができたとしても、給与を受給できるのは稼働から1か月後であるという職場がほとんどです。つまり、1か月分だけの生活費を給付するだけでは生活を再建することは困難と言わざるを得ません。

事態が収束するまでどのくらいの期間を要するか予測することは困難ですが、これから事態が今よりも収束することが予測される夏までの間の3か月間相当分の生活費相当額を、生活が困窮する学生等への生活保障として給付すべきと考えます。

また、文部科学省が示した支給要件は非常に厳格なため、同要件を満たす学生等は相当生活が困窮していると考えられます。したがって、同要件を満たす学生らに対しては、住民税非課税世帯とそれ以外の学生等とで区別する必要はないと思料いたしますので、支給額を区別することなく1か月の生活費15万円を3か月の間、継続して給付することを強く求めます。

(3)要請事項(3)について

   学生支援緊急給付金制度の対象となる学生は全体で約370万人ですが、国が支給を想定している学生は約43万人といわれています。この場合、支給率は約11%にしかなりません。また、支援対象者の推薦は各大学が行いますが、大学毎に推薦枠が決められているため、例え支給要件をすべて満たしていたとしても推薦枠との兼ね合いで給付金を受給することができない学生が多数生じることが予想されます。

同じ生活状況であるにも関わらず、受給できる学生と受給することができない学生が生じてしまう現在の制度は公平性を害するとともに、大学生等が進学・修学をあきらめることがないよう、しっかりと支えていくという制度の趣旨にも反します。そもそも推薦枠は、これまでの貸与型奨学金等の実績をもとに配分されていますが、その実績は新型コロナウイルス感染症の影響が出る前の実績であり、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの国民が失職、減収に追い込まれている現在の状況を反映したものではありません。

   以上のことから、支給を想定している学生等を約43万人から更に拡大するとともに、各大学に配分されている推薦枠を撤廃して、支給要件を満たす学生には給付金の支給が行き渡るよう、国の責任において財政支出を行うことを強く求めます。

(4)要請事項(4)について

   学生支援緊急給付金制度の6番目の支給要件として、既存の支援制度について例示されている条件の内、いずれかの要件を満たす必要があるとされています。具体的には、高等教育の就学支援新制度の第Ⅰ区分の受給者以外は、第1種奨学金(無利子奨学金)を限度額まで利用している又は利用を予定している者という要件が課せられています(第1種奨学金を利用できない者は、民間等を含む申請可能な支援制度の利用予定であることが必要です)。

しかし、無利子であっても第1種奨学金は借金です。この要件は、一言で言うならば、給付金を受給するために、(無利子ではありますが)借金を限度額まで借りることを強要しているようなもので、とても大学生等が進学・修学をあきらめることがないよう、しっかりと支えていくという制度の趣旨に資するものとは考えられません。例えば、私立大学の大学生で自宅外から通学する場合は、月最大64000円第1種奨学金を借りることができます。仮に、1年間貸与を受けた場合の貸与総額は76万8000円、4年間継続して貸与を受けた場合の貸与総額は307万2000円にも上ります。10万円または20万円の給付金を受けるためにこれだけの借金を重ねなければならないというのは学生等にとってリスクが大きすぎます。

   また、平成28年の朝日新聞の報道では、奨学金にからむ自己破産の件数は平成28年度までの5年間で延べ1万5338人に上ったとされています。この報道から3年以上経過していますので、奨学金にからむ自己破産の件数は更に増加しているものと思われます。新型コロナウイルス感染症の影響がない状態であってもこれだけの人達が自己破産に追い込められているのですから、新型コロナウイルス感染症の影響で経済が停滞している現状で、第1種奨学金を限度額まで借りることは、将来自己破産申立てを行わざるを得ないリスクを高めることになります。

   さらに、第1種奨学金は無利子ではありますが、返済が遅れた場合には年5分の延滞金がかかりますので、無利子だから学生等に限度額まで利用させてもリスクが少ないという認識は誤りです。

   以上のことから、「第1奨学金の限度額までの利用している者又は利用を予定している者」という支給要件は制度の趣旨に反し、学生等に将来貸与金の返済ができなくなるというリスクを負わせるものであるので、支給要件から削除するよう強く求めます。

2 独立行政法人日本学生支援機構に対する要請の詳細

(1)要請事項(1)について

  上記のとおり、新型コロナウイルスの影響で家計が急変し、急変後の収入状況が所得要件を満たす場合には大学等における修学の支援に関する法律の支援対象となります。前述のリーフレットによると、急変事由が生じた後の所得については、給与明細や帳簿等で確認して、数か月分の所得から年間所得(見込)を推計すると記載されています。

たしかに不正受給の防止は必要ですが、あまり厳格に所得見込み額を判断すると、本来支援を受けることができるはずであった者であっても支援が受けられなくなったり、申請から認定まで時間がかかりすぎてしまったりするおそれがあります。また、非常事態宣言により休業を余儀なくされた場合などは突然、かつ急激に収入が下がるので、数か月分の所得を確認しなければ認定できないという運用では支援認定が出るまで時間がかかり、生活が成り立たなくなります。

そもそも支援認定後は、3か月ごとに所得を確認し、都度、支援区分を見直す運用がなされていますので、最初の支援認定の段階で多少収入見込み額に誤差があったとしても事後的に修正することが可能です。

以上より、独立行政法人日本学生支援機構に対し、急変事由が生じた後の所得見込額の審査につき、世帯の生活実態に応じた柔軟な判断を行うことを求めます。

(2)要請事項(2)について

  今回コロナウイルスの影響で減収し、奨学金の返済が困難になった場合には、経済的困難を理由として返済の猶予申請をすることができます。しかし、経済的困難を理由とする猶予は通算120か月しか利用できないので、既に期間が経過してしまった方は、生活が苦しくても返済猶予を利用することができません。

他方、災害により減収した場合の返済猶予を利用できた場合には通算120ヵ月の制限にかかりません。災害による減収の場合に通算期間の制約がないのは、個人の能力とは関係なく、誰でも減収に追い込まれるからです。今回の新型コロナウイルスの影響による減収は使用者、労働者を問わず全国的に生じており、災害があった場合における減収とほぼ同様に考えることができます。

したがって、新型コロナウイルスの影響により奨学金の返済が困難となった貸与者には、災害により減収した場合に準じた期間制限のない返還猶予を広く認めるよう要請いたします。

3 結語

このたびは以上を要請しますが、新型コロナウイルスが学生に与えた影響の大きさは依然として測りきれないところがあります。今後も当団体としては、学生からとの意見交換などで得た情報を基に、今年度の学費の減額あるいは免除といった施策の提案も引き続き行っていく予定です。

【連絡先】事務局長 草苅 翔平(弁護士)

事務局所在地 〒980-0804

     仙台市青葉区大町2-3-11 仙台大町レイトンビル4階

       新里・鈴木法律事務所

       電話 022-263-3191

FAX 022-263-3192

           以 上


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