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「奨学金の実態に関する学生アンケート」の結果報告(抜粋)


「奨学金の実態に関する学生アンケート」の結果報告(抜粋)

令和2年9月17日

みやぎ奨学金問題ネットワーク


 私達みやぎ奨学金問題ネットワークは、今年の3月に「奨学金の実態に関する学生アンケート」を実施し、9月17日現在、宮城県内の大学に在籍する96名から回答を頂きました。分析した結果を抜粋して報告いたします。

 なお、このアンケートの実施後、新型コロナウイルス感染症による影響で私たちの生活が一変しました。学生の皆様の修学、生活、進路にどのような影響があったのか、今学生の皆様が求めている支援は何か等、別途アンケート調査を行い、政策提言に役立てていく予定です。今後ともご協力お願いいたします。


1 自宅からの通学時間

  自宅から大学に通う方に片道の通学時間をお尋ねしました(F3)。回答者の55.8%は片道1時間未満でしたが、11.5%が片道2時間以上の通学をしていることがわかりました。1割以上の自宅生が往復4時間以上の通学をしており、相当額の交通費の負担がある中、学業や課外活動、アルバイトなどにも影響を与えていることが予想されます。


2 アルバイトの実情

(1)ひと月のアルバイトの収入額

 学生にひと月のアルバイト収入を尋ねたところ、月5万円以上稼ぐとの回答が全体の5割に上りました(F9b)。また、現在借りている奨学金の額につき、「あまり足りていない」、「全く足りていない」と回答した方で(Q8)、アルバイト収入によって生活費を賄っていると回答した方(Q9)にひと月のアルバイト収入を尋ねたところ、月5万円以上稼ぐとの回答が全体の8割に上りました(Q11)。月5万円を稼ぐためには、時給を850円だと仮定すると、約月60時間働く必要があります。学業やサークル等の課外活動に要する時間、通学時間は別にかかりますので、月60時間以上の労働は学生生活にとって負担となっている可能性があります。


(2)1週間のアルバイトの時間

 奨学金を「利用していたがやめた」、「利用したことがない」と回答した方で「アルバイトをしているため」と回答した方に(F12)1週間のアルバイトの時間を尋ねたところ、週15時間以上との回答が57.9%に上りました(F13)。また、現在借りている奨学金の額につき、「あまり足りていない」、「全く足りていない」と回答した方で(Q8)、アルバイト収入によって生活費を賄っていると回答した方(Q9)に同じ質問をしたところ、8割が週15時間以上と回答しました(Q10)。(1)と同様に、月60時間以上の労働は学生生活にとって負担となっている可能性があります。実際、アルバイト就業が学生の心身に与えている影響については後述します。


(3)アルバイトをしているために負担になっていることはあるか

 アルバイトをしているために負担になっていることはあるか選択式で尋ねたところ(複数回答可)、1番は「学習時間が削られる」(67.5%)、2番目は「睡眠時間が削られる」(64.9%)、3番目は「心に余裕がない」(42.9%)でした(F10)。

 このようにアルバイトをする時間が学業を圧迫し、心身にも悪影響を及ぼしていることがわかります。


(4)試験期間中にアルバイトを休めたか

 奨学金を「利用していたがやめた」、「利用したことがない」と回答した方で「アルバイトをしているため」と回答した方に(F12)、試験期間中にアルバイトの時間を減らそうとしたことがあるか尋ねたところ、65%が「はい」と回答しました(F14)。しかし、実際減らせた方は62.5%で約4割の方がアルバイトの時間を減らせませんでした(F15)。理由としては、「他の子も休みの希望を出していたから」「人手が足りないため」「お金の方が大事」「お金の収入がなくなるから」等が挙げられており(F16)、人手不足で試験期間中であっても休みが取れないことや、お金のために休みを取ることができない傾向にあることがわかります。

 また、現在借りている奨学金の額につき、「あまり足りていない」、「全く足りていない」と回答した方で(Q8)、アルバイト収入によって生活費を賄っていると回答した方(Q9)に同じ質問をしたところ、7割が「はい」と回答し(Q12)。約3割(29.4%)の方がアルバイトの時間を減らせなかったと回答しました(Q13)。理由としては、「他の人と休み希望が被ったから」「収入がないと生活が大変だから」「学費払えるか心配」「お金欲しくて」等が挙げられており(Q14)、ほぼ同じ傾向でした。

 試験よりもアルバイトを優先せざるを得ない実態が明らかとなり、そのような学生の成績、ひいては就活等の進路選択への影響が憂慮されます。


(5)経済的理由で削っていたり、諦めたりしているもの

 経済的理由で削っていたり、諦めたりしているものはあるか選択式で尋ねたところ(複数回答可)、1番は同率で「服・おしゃれ」(60.3%)、「旅行」(60.3%)、3番目は「食費」(46.2%)でした(F17)。

 半分近い方が食費を削らなければならない状況になっています。更に回答の中には、「留学」(26.9%)、「資格取得」(11.5%)と希望する進路を断念せざるを得ない方も相当数いることがわかり、約2割の方は書籍や教科書といった学業にかけるお金を削っていることもわかりました(17.9%)。


3 給付型奨学金

(1)給付型奨学金の利用状況や意義について

 給付型奨学金を利用している者は、回答者の17.6%であり(Q1)、給付型奨学金の存在が進学を決める際の判断に影響を与えたと回答した方は42.9%でした(Q2)。当ネットワークでは、給付型奨学金の支給金額が少ないことを懸念していました。しかし、それでも4割以上の方に影響を与えたという事は、改めて給付型奨学金の存在意義を感じました。


(2)給付型奨学金に対する要望

 給付型奨学金についての要望の1位は、「支給額を上げてほしい」(54.5%)、2位は「選考基準を緩和してほしい」(45.5%)でした(Q3)。やはり、支給金額に物足りなさを感じている学生が多いことと、半数近くの学生が選考基準が厳しいと感じていることがわかります。


4 貸与型奨学金

(1)将来の返済への不安

 「日本学生支援機構の貸与型奨学金」、「大学、民間、自治体などの貸与型奨学金」、「教育ローン」を利用している方に、将来の返済について尋ねたところ、「将来の返済が心配である」と答えた方が81.8%、「将来の返済がやや心配である」と答えた方が9.1%で、9割以上の貸与者が将来の返済に不安を感じていることがわかりました(Q5)。

 なお、アルバイト代を将来の奨学金の返済にあてることを考えていますかという質問(Q15)では回答者の42.9%がアルバイト代を将来の奨学金の返済にあてることを考えていると回答しており、学生にとってはアルバイトでの収入が現在の生活費のみではなく、将来の奨学金の返済にとっても重要であることがわかります。


(2)返済(償還)猶予制度の認知度

 日本学生支援機構の奨学金については、一定期間返済を猶予してもらう制度がありますが、45.3%の方が知らないと回答しました(Q17)。もちろん、奨学金を借りる学生自身が知っておくべき制度ですが、半分近くの方が知らないという事は、日本学生支援機構の広報や奨学金を借りる際の説明会での説明方法にも問題があるのではないかと感じます。


(3)仙台市奨学金返済支援事業の認知度

 2020年度から仙台市奨学金返済支援事業が始まりましたが、この制度を知っている学生は1割もいませんでした(9.1%、Q18)。仙台市奨学金返済支援事業の是非については議論があるものの、奨学金返済の負担を一定程度緩和し、生活費や奨学金返済のためにアルバイトに頼らざるを得ない学生の生活を改善しうる制度ですので、仙台市を始め、各大学等でも積極的な広報が求められます。

 また、制度を知っている方の内、「よく理解している」「それなりに理解している」と回答した方は2割弱(17.6%)に過ぎず(Q19)、さらなる周知が求められます。


(4)自由記載欄(奨学金の借り入れや返済などに関する不安の声)

 最後に回答者から寄せられた声をすべて掲載します。多くの方が将来の返済に不安を抱え、将来の家族設計にも影響を与えていることがわかります。このような声を制度改善のため、当ネットワークでは国や地方自治体、日本学生支援機構に届けていきたいと考えています。

・貸与型奨学金は奨学金ではなく未来借金などに名称を改めるべき。

・給付型奨学金を増やしてほしい。成績要件を直近のものだけでいいようにするなど条件を変更してほしい。

・利子をそんなに高くつけ返す必要があるのか、成績が違うだけで借りれる借りれない奨学金を作った必要があるのか。将来の返済義務の不安があるせいで趣味、学習などにお金を自由に使えてないという学生をよく聞く気がする。

・選考基準が高いために非課税世帯でも、もらうことができない。

・将来の負担になってしまうのではないかと感じる。

・特になし

・毎回安定して返済できるかどうか。

・卒業後の返済がとても不安である。せめて、利息分は無くして欲しい。借りた分を返すのは当たり前のことだが、利息を取るのは間違っているはずだ。学生のためを思うのであれば、利息は無くして欲しい。また、出来ることであれば、返済不要の給付という形になって欲しいと考えている。

・給料はそこまでもらえないのに多額すぎる

・新給付奨学金について。第一区分が非課税世帯は限定的すぎる。第一、二区分となったら第一種奨学金の借り入れ不可は厳しい。

・返済のために生活で我慢しなければいけない部分が出てくるのではないか。毎月しっかりと返済ができるのか

・奨学金がないと大学に行けなかったので感謝はしているのですが、やっぱり将来の返済こことを考えると不安が大きいです。将来家族をもったときに、自分の奨学金による借金が何かしらの不利益をもたらすのかもしれないとも思っています。

・所得による制限がかなりシビアで、家庭環境がほとんど考慮されていないように感じる。院に進みたいが、それどころか現在借り入れている奨学金の返済ですら不安だ。

・出来れば返済の義務がない給付型奨学金があれば将来を不安にも思わず、思い切り学問に集中できると感じる。

・返済免除の条件(勤務年数としてカウントされる病院等)は年度によって変更され得る、とのことでした。毎年最新情報を公開していただけるとありがたいです。

・きちんと返済できるかが不安である

・何年も払い続けるのは正直つらい。いくら社会人になって稼げるとしても、これまで親が負担してくれていたものも自分で払い、奨学金も毎月払うことは将来の不安につながる。もし、20代で結婚して子どもが欲しいと思った時まだ奨学金の返済が残っていたら負担をかけたくないし、自分自身さらに負担が増えるため結婚することも子どももあきらめると思う。

・返済免除のものをもっと普及させてほしいです。


以上

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